備蓄食に関する20%問題

南海トラフでは100~150年周期で大地震の発生が予測されています。 前回(昭和東南海地震(1944年)及び昭和南海地震(1946年))から既に70年以上が経過し、次の大地震発生の可能性が高まってきています。
私たちは被害想定の大きい中部圏において、人口動態を踏まえたデータの抽出、取りまとめを行いました。
その結果、備蓄という観点から置き去りになる人たちが、人口の20%もいることを知りました。
私たちはこれを「備蓄食に関する20%問題」と提唱し、ここに考え方や詳細データを公開いたします。

中部圏内の人口1,705万人のうち

法令順守のみでは「置き去り」にされてしまう人々354万人(20.6%)

データ

疾病により食事の制限を受ける患者

  • ■傷病の種類を、食事の傷病への影響度により、4つのカテゴリーに区分(A:命に関わる、B:病状悪化(影響大)C:影響少、D:影響なし)
  • ■食事の影響度が高いA、Bのカテゴリーが食事制限を受ける患者と定義

食の制約の大きさを表した図

カテゴリーA、Bに該当する傷病

食事
制限度
傷病大項目 傷病小項目

AMust

甲状腺障害 糖尿病
高血圧性心疾患 心不全、大動脈解離
糸球体疾患、賢尿細管間質性疾患及び賢不全 糸球体疾患、賢尿細管間質性疾患及び賢不全
妊娠高血圧症候群 妊娠高血圧症候群

BShould

感染症及び寄生虫症
腸管感染症 サルモネラ、赤痢、コレラ、チフス、腸炎など
心疾患(高血圧性のものを除く) 弁膜症、心筋症
虚血性心 狭心症、心筋梗塞
脳血管 脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血
胃潰瘍及び十二指腸潰瘍 胃潰瘍及び十二指腸潰瘍
胃炎及び十二指腸炎 胃炎及び十二指腸炎
肝疾患 肝炎、肝不全、肝硬変(肝がん)
結核 結核
新生物<腫瘍>
悪性新生物 ガン、白血病、リンパ腫、組織球症、固形腫瘍、神経系腫瘍
胃の悪性新生物 胃がん
結腸及び直腸の悪性新生物 大腸がん
気管、気管支及び肺の悪性新生物 肺がん
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害 再生不良性貧血、血小板減少性紫斑病、白血病、悪性リンパ腫、 組織球症
内分泌、栄養及び代謝
甲状腺障害 バセドウ病、橋本病
消化器系の疾患
循環器系の疾患

中部圏内、傷病カテゴリー別人口

上段:患者数(人) 下段:人口比率(%)

傷病
カテゴリー
中部圏内
合計
愛知 長野 岐阜 静岡 三重
17,050,671 7,549,549 2,052,033 1,991,390 3,641,827 1,815,827

AMust

144,000 60,800 15,800 19,400 32,000 16,000
0.81 0.77 0.97 0.88 0.88

BShould

620,200 280,000 71,000 79,200 122,100 67,900
3.71 3.46 3.98 3.35 3.74

CAdvised

511,600 232,900 57,500 64,000 104,300 52,900
3.08 2.80 3.21 2.86 2.91

DNo Problem

564,200 264,700 60,400 65,600 104,300 69,200
3.51 2.94 3.29 2.86 3.81

平成29年 厚生労働省 患者調査より

A+B= 764,200人

中部圏内、食物アレルギー患者数

  • ■顕在的な症状はないが、原因となる食べ物の摂取で全身にアレルギー症状が発症する
  • ■原因となる食べ物は、卵、牛乳、小麦が多く、通常の備蓄食では対応できない

(単位:人)

年令 人口に占める
割合※
愛知県 長野県 岐阜県 静岡県 三重県 中部圏内
0-6歳 8.9 39,870 9,573 9,464 17,610 8,550 85,067
7-12歳 11.4 46,787 12,171 12,125 21,810 8,840 101,733
13-19歳 11.2 56,601 15,454 15,377 27,022 13,387 127,841
20歳台 12.1 100,638 19,001 21,507 37,065 19,301 197,513
30歳台 10.4 94,780 21,386 21,311 41,870 19,846 199,192
40歳台 9.6 110,676 27,622 27,008 50,700 24,651 240,657
50歳台 8.8 83,736 22,697 22,015 40,665 19,906 189,019
60歳以上 10.4 234,823 80,623 74,399 135,298 65,332 590,425

※人口に占める割合はH16神奈川県衛生研究所のアレルギーに関する調査データによる(60歳以上のデータは欠けていたため、各世代の割合の平均値とした)

アレルギー患者総数 1,731,446人

中部圏内、高齢者、幼少児人口

  • ■85歳以上の高齢者、5歳未満の幼少児が「食の制約を受ける人々」と仮定
  • ■年齢別人口よりそれぞれを算出
分野 中部圏内計 愛知県 長野県 岐阜県 静岡県 三重県
総人口 17,050,671 7,549,594 2,052,033 1,991,390 3,641,827 1,815,827
85歳以上 人口 735,994 254,754 127,885 95,192 171,618 86,545
割合 4.3% 3.4% 6.2% 4.8% 4.7% 4.8%
5歳未満 人口 663,198 320,352 75,879 75,012 137,480 54,475
割合 3.8% 4.2% 3.7% 3.8% 3.8% 3.9%

※H30 10/1時点 各県の人口動向調査より

中部圏内 特定宗教者の人口

  • ■中部圏内の外国人居住者のうち、イスラム教、ヒンドゥー教、ユダヤ教徒が食事制限ありと仮定
中部圏内 愛知県 長野県 岐阜県 静岡県 三重県
総人口 17,050,671 7,549,594 2,052,033 1,991,390 3,641,827 1,815,827
うち外国人居住者 487,001 251,251 36,401 55,120 92,236 51,993
うち食事制限のある宗教の信者 39,477 23,088 2,509 3,238 6,895 3,747
イスラム教 26,091 14,354 1,973 2,421 4,808 2,535
ヒンドゥー教 12,742 8,433 512 783 1,913 1,101
ユダヤ教 644 301 24 34 174 111

平成30年(2018年)6月末現在外国人住民数 法務省調べ
各国の宗教別人口をもとに算出

中部国際空港 入出国外国人数/1日平均
(イスラム・ヒンドゥー・ユダヤ教徒の存在する国を抜粋)

入・出国総数
(1日平均)
人口に占める割合(%) 入・出国人数
イスラム ヒンドゥー ユダヤ イスラム ヒンドゥー ユダヤ
中国 3,251 1.70 55 0 0
フィリピン 425 5.00 21 0 0
タイ 332 5.00 17 0 0
米国 164 1.00 1.00 0 2 2
シンガポール 71 14.00 5.00 10 4 0
マレーシア 51 61.00 6.00 31 3 0
ドイツ 46 2.60 0.10 1 0 0
英国 44 4.40 1.30 0.40 2 1 0
インドネシア 32 87.21 1.69 28 1 0
ネパール 27 4.40 81.30 1 22 0
インド 27 14.20 79.80 4 22 0
フランス 27 10.00 1.00 3 0 0
スリランカ 16 9.70 12.60 2 2 0
イタリア 15 3.70 1 0 0
パキスタン 13 97.00 1.50 12 0 0
トルコ 6 99.00 5 0 0
ペルー 5 3.30 0 0 0
バングラディッシュ 5 89.70 9.20 4 0 0
ウズベキスタン 1 90.00 1 0 0
エジプト 1 90.00 1 0 0
イラン 1 99.00 1 0 0
アフガニスタン 1 99.00 1 0 0
サウジアラビア 1 100.00 1 0 0
202 57 2

2018年法務省 出入国管理統計表(年報)、各国の宗教別人口をもとに算出

【参考】世界の食の規制

イスラム教徒:ハラルミール(モスリムミール)

  • 全世界に16憶以上の信者がいる
  • 合法的で許されたものを「ハラル」と呼び、そうでないものは食べてはいけない
  • 豚やアルコールなどを口にしてはいけない
  • ラマダンの間は日の出から日没まで断食

ヒンドゥー教徒:ヒンドゥーミール

  • 全世界に11億以上の信者がいる
  • 牛肉、魚介類、卵を食べてはいけない
  • 乳製品、飲酒は可能

ユダヤ教徒:コーシャミール

  • イスラエルや米国を中心に約1,300万人、富裕層が多い
  • 食べて良いものを「コーシャ」と呼び、そうでないものは食べてはいけないとされている
  • 一部鶏類、馬、豚、うさぎ、エビ、カニ、貝類、うろこのない魚(ナマズなど)は食べてはいけない
  • 牛、鹿、羊(二つにわれているひづめのある反すう動物)は食べてもよい
  • 鶏類で食べられるものは鶏、鴨、アヒル、ガチョウ、七面鳥
  • コーシャ認定のお酒は可
  • 組み合わせの制限あり(肉と魚は×、肉と乳製品は×)

ベジタリアン・ヴィーガン:ベジタリアンミール

  • ヒンドゥー教やジャイナ教を信仰するインド国民や倫理面・健康面を気にする欧米人
  • ベジタリアン植物性の食品と卵は食べるが魚や肉は食べない
  • ヴィーガンは卵、牛乳、はちみつを含む一切の動物性食品の摂取はさける
  • 魚介類は食べられるベジタリアンもおり、人によって食の制限の内容が異なる

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